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アトピーの臨床から皮膚バリアを考える-フィラグリンとタイトジャンクション-

はじめに

この自粛中、2019年秋の日本皮膚科学会での出来事を思い出していました。

近頃、化粧品&皮膚科医の組織「香粧品学会」で臨床の話があまり聞けないので、もっと本気の皮膚科の学会に乗り込んでアトピーとニキビについての講演を選んで聞いていたんですけどね。

化粧品業界に入ってから今までずっと一貫して「肌バリア=セラミド」ぐらいに思ってて、正直私の脳内での肌バリア重要度ってこんな感じだったんですよ↓

  • 96% セラミド
  • 4% フィラグリン(NMF)
  • 2% タイトジャンクション

ひどいバランス(笑)
もうなんていうの?保湿とか肌バリア関連の話になると、セラミド以外の情報はわりとあっさり読むみたいな。資料でも「あ、ハーーイ」みたいな。←

ところがです。
皮膚科の先生とアトピーの患者さんとのやり取り、患者さんの基本データ、治療・・・話しの中に、あんまりセラミドってワード出てこないんです。
その代わり出てくるのが

フィラグリン!!

.

えーこちらの患者さんですが

IgE値は~~
ダニ・金属アレルギーの有無は~
そして、手のひら視診ではフィラグリン遺伝異常はないと思われました

みたいな報告から始まるわけね。

日本のアトピー患者の約3割は先天性のフィラグリン遺伝子異常があり、それを簡易的に見分けるために手のシワを視診したりするんですけど、


出典:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1365-2133.2009.09339.x

医療の世界は「治療」でもちろん「薬」がメインだからスキンケアの話題とか出てこないわけだけど、もうずーーーっと 「バリア=フィラグリン」みたいなテンションでどの講演も進んでいくんですよ。
「バリア=セラミド」と思ってる私をよそにフィラグリンの話ばっかり!出てくるんです!!

いや・・知ってましたよ。
アトピーの患者さんにはフィラグリンが少ない事も、フィラグリンを分解してNMFにするカスパーゼ14が少ない事も、さらっと昔ブログに書いてた。(小声)

でも、私の脳内ではフィラグリン=NMFの重要度って低かったんですよ。
だって、3割がフィラグリン遺伝子異常とは言っても残りの7割は違うんだから、そっちのが大事じゃん・・??洗いすぎとか塗るものを変えたら良さそうじゃん?やっぱセラミドじゃん?
だって!私も私の周りのアトピーっこもやっぱりセラミドがっつり塗った方が肌がよく改善していてたんだもん!

そりゃね、化粧品は「肌荒れしてる時には塗るな」という注意文を書かされるぐらいですから、当然健康な肌に塗る事が前提の化粧品業界にいる私と、アトピーという「皮膚疾患」を扱うお医者様、知識も扱っている領域も全然違うわけですが、アトピーではこんなにフィラグリンが大事なんだ・・・とカルチャーショックがすごかったんですよ。

さらには、タイトジャンクション。(以下:TJ)
これも「まぁなんか膜的なのありますよね」ぐらいだったんですけどね、

TJ=アトピー肌の最後の砦(とりで)

みたいに扱われてるんですよ!!
もうすごいんだから。TJの講演にお医者さんが押しかけまくってて。


出典:http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-190429.pdf

えっ・・そんな熱量・・?という驚き。
TJもちろん研究してる化粧品会社あるけど、テーマとしてそんな多くないし。

そんな2日間の学会で肌バリアについてカルチャーショックを受けたのに、すっかりいつもの日常を送っていた中、神様の啓示なのかい??というぐらいコロナ自粛中に「フィラグリン」の文字を目にすることになり、これは心入れ替えろという啓示と受け取りましたため、今回はこれまでブログでほとんど触れた事のないフィラグリンとタイトジャンクションについて書きますね。自分用のメモみたいな感じだから読みにくかったらごめんなさい。

真理子、肌バリアを考え直すの巻。

まずは図で理解しようのコーナー

  • セラミド
  • フィラグリン(NMF)
  • タイトジャンクション

それぞれどこにいるのか。こんな感じです↓


出典:http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-190429.pdf

セラミドとフィラグリン(NMF)は一番上の角質層にいて、タイトジャンクションは1こ下の顆粒層の2層目にいます。
角質層に上がってくるにしたがって、フィラグリンはNMFになっていきます。

タイトジャンクションの上と下はまさに別世界デスネ・・・・

まずはタイトジャンクション

.
タイトジャンクションは、顆粒層の2層目にある細胞と細胞をシールしている「膜」です。(以下:TJ)


出典:http://ribiyo-news.jp/pdf/keio_091203.pdf

水はもちろん、イオンやたんぱく質が通り抜けるのを制御している

精密な水門と思っていただければ。

.
.
この動画↓で緑の線とか紫の線が、タイトジャンクション~!! ふぅぅ~~!!TJ!!
細胞がいい感じ~~~にTJがなくならないように~くぐり抜けていきます↓


出典:http://www.derma.med.keio.ac.jp/derma/medic/project/04.html

よくできてるよね!人間の細胞!タイトジャンクション!
細胞消えていっちゃってますが、実際にはこの細胞の中には、NMFの元になる「プロフィラグリン」がいて、上方向、角層に向かうにつれて、プロフィラグリン→フィラグリン→NMFになります。(セラミドのことは置いておきます)

先ほどの図ですが、

久保先生はアトピーとTJを火事に例えて、

ちょちょっとステロイド塗って、表面の炎症が治まったな~って塗るのをやめると
外まで出てきてた火がやっと鎮火したぐらい。(角層)
家の中の火元(TJ)はまだくすぶっていて、全然鎮火できてなーーーーい!!!

そもそも、炎症が起きている時にできた角層は弱い!!
だから、炎症をおさえ、TJが正常に戻り、良い角層に生まれ変わるには2~3週間かかるからーー!!

と仰せでした・・
だから、弱いステロイドを使ったり、少しよくなったからとすぐに塗るのをやめてはいけないんですね。

さてこのタイトジャンクション、化粧品の世界でも「クローディン1」というたんぱく質がマーカーとなってデータがとられています。

この研究では、クローディン1とバリア機能の関連性・重要性について書かれていますが、
クローディン1を完全になくしたマウスは脱水で生後1日で死ぬってさらっと書いてあるの怖すぎるんですけど。ちょっとなめてました。
クローディン1を低下させると、アトピー性皮膚炎に似た状態になることが報告されていますね。
また、新たにJAM-Aという指標も今後出てきそうです。
(参考:https://www.nips.ac.jp/release/2019/08/post_396.html

【クローディン1データ有】
→スカイフックのヘキサカルボキシメチルジペプチド-12
※もっとあったら随時載せます。全部調べるの時間かかるので。

続きましてフィラグリン

さて、フィラグリンがNMFになるまではこんな感じ↓

出典:https://shimizuderm.com/textbook03/pdf/1-03.pdf

ちなみに。
なんでお医者様がこんなにフィラグリンを重視するかなんですが、アトピーだけじゃなくて、喘息や他のアレルギー疾患の引き金と思われているからなんですね。
ちょっと、お医者様から見たアトピー治療をいくつか文献見てみたんですが、こちらがよくまとまっていました。
正直、アトピーに関してはいまだにわかっていない事が多いです。

▶80年代
アトピーはアレルギー疾患の1種と思われてた→とりまアレルゲン防御しとこ

▶90年代
アトピー患者の皮膚ではセラミドが減少していてバリア機能障害がありと判明→スキンケア重視期
同時にステロイドバッシングにより、医療現場混乱

▶00年
バリア機能障害とアレルギーセットで考えよう期

▶2006年
フィラグリン遺伝子異常の関連性わかる!→バリア機能障害に再び脚光

セラミドにこだわりまくる私は90年代の女ということですね(違)

でですね。
アトピー患者とフィラグリン遺伝子異常の話、元々は魚のウロコみたいな形に皮膚がカサッカサになる魚鱗癬の患者さんにフィラグリン遺伝子異常があることがわかった事から、魚鱗癬とよく合併して出るアトピー性皮膚炎もフィラグリン遺伝子異常あるんじゃ・・?みたいな事からわかったんですね。
参照:https://www.nature.com/articles/ng1767

ただ、このアトピーとフィラグリンの関係の何がセンセーショナルだったかというと、
例えば赤ちゃんに食品アレルギーがあると、アトピー性皮膚炎がセットでおこることが多いんですが、アレルギーがあるとアトピーになるのではなく、

皮膚のバリア障害(アトピー) → アレルギー&喘息リスク↑

という「原因と結果の転換」が起こったのです。
皮膚のバリア機能が壊れると、アレルゲンが簡単に皮膚内に入り込み、アレルギー反応や喘息を引き起こすと。

だけど!!!

先天性のフィラグリン遺伝子異常があろうがなかろうが、どっちにしろ、
アトピー性皮膚炎の患者さんはフィラグリンが少ないのです。

医療の世界ではこのフィラグリンに関して、JTC801という化合物が「内服」で効くというスタディがあり、今後、「アトピー皮膚炎の飲み薬」が開発されるかもしれません。

ここからは化粧品の世界の話ですが、フィラグリンがあってもその分解酵素がないとこれまたNMF産生はうまく行かず、肌バリアを損ねることもわかっています。
材料だけあっても、シェフがいないと料理にならないのと同じですね。

参照:http://www.jbsoc.or.jp/seika/wp-content/uploads/2013/10/82-01-10.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/47/3/47_216/_pdf/-char/ja

【フィラグリン データ有】
スカイフック→シラントリオール
【カスパーゼ14 データ有】
プラセニスト→マンダリンオレンジ果皮エキス

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アトピーの方へのオススメ本

今アトピーだよという人はとりあえず大塚先生の本は読んでおこう。

また、アトピーで金属アレルギーの話がよく出てくるんですが、食品にも結構含まれてるので(特にニッケル、コバルト、クロム)これを参考にしてね
https://www.sugiyama-dental.com/allergy/allergy13/

お子さんにはこちらもぜひ


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生後すぐから保湿スキンケアをするとアトピー予防になるので、せっせと保湿をすすめられている親御さんが多いと思います。
最近、こちらに生後すぐのスキンケアが確実にアトピー予防になるわけでもないみたいな話出てざわつきましたけど、まぁ一般的に保湿は大事なので適切にね♪

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最後に

ほぼ自分のための備忘録のような記事になりました(笑)
読みにくかったらごめんなさい!!

繰り返しになりますが、健康な肌に塗る「化粧品」の世界で生きる私と、疾患を治す「薬」を扱うお医者様の視点は違って当然です。
疾患というマイナスをゼロに戻す薬と、健康な状態からよりプラスに持っていく化粧品。
化粧品で肌を治療することはできませんが、臨床の知見を元に予防に生かす事はできますし、視点は違えど化粧品会社も同じような領域を研究しています。
今後はセラミドだけでなく、フィラグリン(そのものというよりも分解酵素)とタイトジャンクションにもより力を入れて成分を吟味していきたいと思います。
資料見返しているので、データ取れてる成分は更新しますが、昔からずーーっと売れてる(実感力のある)成分って全然データ取ってないんだよね・・笑うー!
では!

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