化粧品のいろいろ、料理で例えるとわかりやすい件

化粧品というものをとらえるとき、いかに皆さまにわかりやすく伝えられるかということに常々心を砕いておりますが、化粧品にまつわるだいたいのことは料理や食べ物に例えると、とても分かりやすいことに気づきましたので、つらつら書いてみたいと思います。

原材料表示でわかるのは氷山の一角

私は、社会人最初の会社でマンゴーのピューレを扱っていました。
マンゴー界の王様はインドのアルフォンソ種というのですが、色は濃いオレンジで味も香りも濃厚、まさに美味しさがギュギュっと詰まった品種です。
当然アルフォンソ種と他の種では、作ったお菓子の出来上がりの濃厚さが全然違います。
ただし、原材料の表示ではどんな種であっても「マンゴー」になります。つまり、原材料だけでは違いが伝わらない。

これは化粧品でも全く同じです。
裏面に記載された全成分のみでは、その成分のグレードまではわかりません。
実際に、「表示名称が同じだからより安価な原料に切り替えようかと思案するもやっぱり出来上がった製品が全然違う」なんて話は業界ではよく聞く話です。

食品の原材料表示も化粧品の全成分表示も特定のアレルギーを持つ方が避けられるようにという制度であり、それによって製品が過大評価されたり過小評価されたりという類のものではありません。

また、材料を真似してそろえただけで、同じ料理ができるでしょうか？
行程や作り方、混ぜるタイミングや火を入れる時間、様々なこだわりも表には出てきませんが、料理にはとても大事なポイントであることは皆さんもご存知だと思います。

つまり、材料だけでなく、作り方もとても大事。
やはり全成分表示だけでは製品の本当の価値はわからないものです。

単一成分製品は、材料を買っているだけ

巷には化粧品原料の「原液販売」であったり、「〇〇５％液」みたいなものが売られていたりします。
ですがこれは単に、「人参」とか「卵」とかを買っているにすぎません。
いや、もはや「単一成分のサプリメント」と言ってもいいかもしれません。「ビタミンＣ」みたいな。

私たち化粧品メーカーというのは、その材料を使っておいしく、栄養バランスのとれた料理を作るかで競っています。
大手になればなるほど材料そのものの安全性はもとより、最終的な料理の効果・安全性などもきちんとみています。

そして、化粧品の素材販売は厳密にいうと日本の薬機法ではグレーということも覚えておいて頂きたいですし、
「〇〇という成分を買ったら、『お手持ちの化粧水に混ぜてください』と書いてあったので、スキンディレクションに混ぜてもいいですか？」という類のご質問には、いついかなる時も「安全性の担保はできません」という回答になります。

あなたが「おいしい」と思えればそれでよい

常々、「あなたの肌が調子よければそれでいい」ということを申し上げています。
化粧品になるとなぜか「私はこのカレーおいしいと思うのですが、正しいでしょうか？」みたいな質問が来たりします。

あなたが美味しいと思えば、あなたにとっていい料理。
それ以上でもそれ以下でもありません。自分の感覚を大事にしましょう。

どのくらい塗ればいいのか＝どのくらい食べればいいのか

正直私が一番困惑するのは、「どのくらい塗ればいいですか？」というご質問です。
カレー屋さんが「1人前」を設定しているようにもちろん一応の目安はあります。
でも、この質問は私にとって「カレーどのくらい食べたらいいでしょうか」という質問と同義です。

人の顔はテニスボール3個分～バスケットボール程度までの大きさの差があるそうです。
それに、肌も毎日同じコンディションではないですよね？
同じ化粧品でも、量を増やしたり減らしたりして調整するのは自然なことです。
なんか今日はたくさん食べられないな～みたいなこと、あるじゃないですか？
あなたのお腹のすき具合はあなたしかわからないのと同じように、あなたの肌の調子はあなたにしかわからないものです。

もちろんご相談やこういった事例がありましたよ～というお手伝いはさせていただきますが、自分のお肌をきちんと監督するのはあなたの役目です。

「スキンケアは自分へのおもてなし」とよく申し上げていますが、ご自身の身体をご自身が一番に気遣ってあげる事、それが自然な自己肯定感や自分の感覚を信じるという事につながると思っています。

最後に。
SNSでは派手でわかりやすい成分が話題になったり、マーケティング力だけで突発的に売れる製品もたくさんあります。
でも業界の内情を知れば知るほど、歴史のある会社や大きな会社は、社会的な責任を伴って製品を作っています。
全ての成分や作法にメリットデメリットがある事を理解しつつ、バランス感覚を持った賢い消費者が増えてくれる事を祈っています！！